昨年より挑戦中の技術士(総合技術監理部門)。
名前の通り総合的で幅広い技術や知見が必要ですし、実務経験を踏まえた管理技術、文章表現力も必要となる資格です。
これから技術士関連の記事も書いていこうと思いますが、難しいわりに知名度があまり高くない資格なので、技術士や総合技術監理部門の概要を簡単に記載します。
加えて、会社員がこの資格取得にチャレンジするメリットにも言及しておきます。
技術士とは
日本技術士会のホームページに次のように記載されています。
技術士とは
技術士制度は産業に必要な技術者育成のためにできました。
19世紀以降、世界の産業の発展に技術者は大きく貢献してきました。日本でも産業の発展の要となる優秀な技術者を育成する必要がありました。
そして、企業等の不祥事が報道される昨今、高度な技術と高い技術者倫理を兼ね備えた技術士が求められています。今の時代こそ技術士は必要です。
技術士制度について
「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた優れた技術者」の育成を図るための、国による資格認定制度(文部科学省所管)です。
さらに、「技術士」は、「技術士法」により高い技術者倫理を備え、継続的な資質向上に努めることが責務となっています。
「技術士」は、産業経済、社会生活の科学技術に関する、ほぼ全ての分野(21の技術部門)をカバーし、先進的な活動から身近な生活にまで関わっています。
(出典)技術士Professional Engineerとは,日本技術士会 https://www.engineer.or.jp/contents/about_engineers.html
技術士は技術分野の最高ランクの国家資格(文部科学省所管)で、学術界の博士と産業界の技術士が対になる存在だと認識しています。
技術部門によっては独占的に実施できる業務もあるようですが、その一部のケースを除いて技術士は独占権がない資格です。資格取得により名乗ることが許される資格なので、名称独占資格に該当します。
※なお、独占権がある資格(業務独占資格)は医師や弁理士、税理士などがありますね。
私も電気電子部門の技術士ですが、この資格を持っているからこそできる業務は特にありません。
資格を取得して”直接的に”効果のあったことといえば、名刺に記載できること。名刺交換時に話題になることが何度かあった程度です。
名刺に書けるだけって、そんな資格に何の意味があるねん!
ということを言われることもありますが、大きなメリットがあります。
私が思う技術士取得による最大のメリットは、該当分野の高度な技術力を持っていることを国が証明する資格だということです。
社内でいくら高い評価を受けていても、所詮それは社内評価です。
会社員として働いていると狭い社内の世界で物事を考えてしまいがちです。自身のスキルアップのために、優れた技術者に求められる資質・能力を問われる技術士試験は有益なものと考えています。
総合技術監理部門(総監)とは
ここまで技術士がどういうものかの概要を紹介してきました。
技術士は21の技術部門からなりますが、総合技術監理部門だけは他の部門と大きく異なります。
科学技術は巨大化・総合化・複雑化が進んでおり、科学技術を活用して様々な成果を上げるためには一部の専門家の努力や個別の管理だけでは不十分な状況となってきています。
そのため、業務全体を見渡し俯瞰的な把握・分析に基づき、複数の要求事項を総合的に判断することにより全体的に「監理」していくことが必要となってきています。
このような能力を持った人材を育成し活用を図るため、技術士のひとつの部門として総合技術監理部門が2001年度に新設されました。
総合技術監理部門の概念や技術体系は、文部科学省のホームページにキーワード集として取りまとめられています。以下はそのキーワード集から技術体系と範囲に関する記述を抜粋したものです。
総合技術監理の技術体系と範囲
総合技術監理の技術体系として骨格となる管理技術は,経済性管理,人的資源管理,情報管理,安全管理,社会環境管理の5つである。これらそれぞれの管理技術の範囲を表1に示す。
総合技術監理は,業務全体を俯瞰し,これら5つの管理に関する総合的な分析・評価に基づいて,最適な企画,計画,実施,対応等を行う監理業務ということができよう。
表1 5つの管理技術の範囲
(1)経済性管理
事業企画,品質の管理,工程管理,現場の管理と改善,原価管理,
財務会計,設備管理,計画・管理の数理的手法(2)人的資源管理
人の行動と組織,労働関係法と労務管理,人材活用計画,人材開発
(3)情報管理
情報分析,コミュニケーションと合意形成,
知的財産権と情報の保護と活用,情報通信技術動向,情報セキュリティ(4)安全管理
安全の概念,リスクマネジメント,労働安全衛生管理,
事故・災害の未然防止対応活動・技術,危機管理,システム安全工学手法(5)社会環境管理
地球的規模の環境問題,地域環境問題,環境保全の基本原則,
組織の社会的責任と環境管理活動総合技術監理における総合管理技術
総合技術監理では,5つの管理を独立に行うのではなく,互いに有機的に関連づけて,あるいは統一した機軸の下で行うことが望ましい。しかし個別の管理から提示される選択肢は互いに相反するものであったり,トレードオフの関係にあったりすることが多い。そこで,それらを調整し統一的な結論の提示,もしくは矛盾の解決・調整を行うための総合管理技術があると望ましい。しかし,残念ながら現状ではこのような管理技術として統一的に広く適用可能な方法論は確立されていない。
(以降、省略)
総合技術監理部門 キーワード集 2021
科学技術の巨大化・総合化・複雑化を背景として、一部の専門家の努力や個別の管理だけでは対応できないことが増えてきています。
キーワード集にもあるように、個別の管理から提示される選択肢は別の管理との間でトレードオフの関係になることが多く、トレードオフの改善が必要となってきます。
そのような総合的な課題解決のため、上記の5つの管理の観点からの要求事項のバランスを取りながら総合的に判断することが必要です。
言うは易く行うは難しですが、この役割を担うのが総合技術監理部門の技術士(総監技術士)となります。
会社員が総監技術士に挑戦するメリット
紹介しましたように、総合技術監理部門の技術体系や範囲はとんでもなく広いです。
一から網羅的に学習しようとすると挫折しそうになるくらいの広さです。
ただ、前述の5つの管理技術の範囲として記載されている項目やキーワード集に掲載されているキーワードを確認してみてください。
企業で技術者として働くうえで必要となることが多数含まれており、技術士の資格勉強として取り組んでいなくとも日ごろの業務を通じて身に着いている事項も多々あるかと思います。
会社員が総監技術士に挑戦するメリット、私は以下の3つだと考えています。
1. 技術者としての実力確認
1つ目は他の技術部門の技術士や他の資格でも同様のことがいえるかと思いますが、自分自身の技術者としての実力確認ができます。
スキルアップのために現在地を把握することは重要です。
私自身、総監技術士の試験対策を進める中で、5つの管理技術の得手不得手もある程度見えてきましたし、これまでの業務の棚卸しをした際に管理技術のバランスに改善の余地があるなど気づきを得ることもできました。
2. 技術系社員・管理職としてのマネジメント能力の向上
総監技術士は専門分野の技術力だけでなく技術的な知見も踏まえたマネジメント能力が問われる資格です。
なかなかマネジメント能力を問う資格というのはないので、総監技術士への挑戦によって企業の管理職(管理職を目指す方も含む)にとっては他で得にくい役立つ知識・ノウハウが習得できると考えています。
3. 総監技術士としての能力の社外からの認定
3つ目は冒頭にも触れた話とも関連しますが、社内評価ではなく社外(国)から認定を受けるという点です。
技術士自体が技術部門の最高ランクの国家資格という位置づけですが、総合技術監理部門は技術士の21の部門の中でも最上位に位置する部門です。
そのため難易度は高いですが、合格できれば公的に技術力・マネジメント力が認められます。
まとめ
以上のことから、私はいまも総監技術士への挑戦を続けています。
文章作成の練習や自分自身の理解の整理を兼ねて、学習した内容などをこのブログの記事に残していくつもりです。
では今回はこのあたりで失礼します!
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